子ども達の「未来を生き抜く力」を育てるために、学習を個別最適化|株式会社COMPASS 代表 神野元基氏インタビュー

CONPASS代表神野氏記事のアイキャッチ
子ども達に効率的な学習を提供するAI型タブレット教材「Qubena(キュビナ)」を開発・提供している株式会社COMPASS。

開発以降、サービス導入先も年々幅広い業態に拡大、また2018年には経済産業省の「未来の教室」実証事業に採択、文部科学省・経済産業省の方策・提言資料に事例として掲載されるなど、注目度もますます高まっている会社です。

今回は、Qubenaの教材内容や会社の事業展開について、代表取締役の神野元基氏にお話を伺いました。

未来のために必要なのは、日本の教育の変革

―まず、御社が提供する「Qubena」のサービス概要について教えてください。
Qubena は、子ども達の学習の習熟度を分析し、一人ひとりに合った学習内容を提供する機能を備えた、AI型タブレット教材です。現在、自治体や公立私立などの公教育機関、河合塾様や練成会グループ様など50法人以上の学習塾に導入、23,000人以上のユーザにご利用いただいています。また、学童や特別支援教室など、さまざまな業態への導入も増えてきています。

Qubenaの写真

Qubenaを使う子どもの様子

―開発経緯は、どのようなものだったのでしょうか。
開発のきっかけになったのは、私が2011年にシリコンバレーで起業し働いていた当時、現地で注目されていたAIやITの未来にふれたことです。

特にシンギュラリティ* に興味を持ち、シンギュラリティが訪れると言われている2045年に社会の中心を担うのは今の子ども達だと考え、日本の教育の現状を変えなければと感じました。そして日本へ戻り、子ども達が未来について知り、今学ぶべきことを学べる教育環境を届けたい、ということで教育事業をスタートさせました。

* シンギュラリティとは|人工知能(AI)が人類の知能を超える転換点(技術的特異点)。または、それがもたらす世界の変化のことを言う。
引用:コトバンク(https://kotobank.jp/word/%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%AE%E3%83%A5%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3-1737937)

株式会社COMPASS 代表 神野元基氏の写真

株式会社COMPASS 代表 神野元基氏


帰国後、まず始めたのは学習塾の開校でした。

一般教科を教えながら、別の時間を設けて未来について教え、生徒と一緒に考えるような授業を行っていましたが、実際には子ども達は部活や勉強に追われて未来のことを学ぶ時間を確保することが困難だということが、学習塾を運営する中で分かったんです。

この困難を克服するために、時間を生み出す、学習の効率化に焦点をあてるようになっていきました。

学習効率化のために行ったのが、学習要素をこれ以上細かくできないレベルまで細分化した問題のプリントをいくつも用意して、講師が目視で生徒のつまづいている要素を見つけたら、次にその要素を克服するプリントを出して解かせる、ということを生徒に取り組んでもらいました。

この方法である程度学習を効率化できることが分かったものの、先生のスキルも必要ですし、先生一人あたりが指導できる生徒数も限られてしまうため、先生の代わりにAIができるようにQubenaを開発しました。

学習時間を7分の1に圧縮可能なAI型学習教材「Qubena」

―Qubenaは、具体的にはどのような教材になりますか。
間違えた要因を見つけ出し、その要素を学び直すために遡って問題を出題したり、難易度を下げた問題を出題します。理解が進んでいる子どもに対してはより難しい問題を出すこともでき、子ども達が自身のレベルに合わせて学習を進めることができる点が、この教材の最大の特長です。

また、手書きにこだわっていて、今までのタブレット教材ではあまり実装されていなかった、コンパスや定規などの機能もタブレット上で使えるように作っており、高い操作性と文字認識に定評があります。イラストやアニメ―ション付きの解説も見られるので、まだ習ったことのない単元でも、子ども達は解説を見ながら自分で問題を解き進めていくことができます。

Qubenaの写真

現在算数、数学の他、英語も今年度より提供開始した


それから、学校や学習塾で導入されている場合、先生は生徒の進捗や正答率、回答内容、所要時間、集中度、などをタブレットを通して確認することができます。家庭学習についても、いつ、どのくらいの時間をかけて取り組んだのかなどのデータを見ることができるので、子ども達一人ひとりに合わせたより細かい学習指導や、学習の習慣化といった指導をすることも可能になります。
―学校や学習塾などの法人向けの事業以外に、Qubenaを使ったサービスとして、御社直営の学習塾「Qubena Academy」、フランチャイズの学習塾「Qubena Room」、家庭用タブレット教材「Qubena with Lite」の3事業を展開されていますね。
はい。全て先ほどご説明したQubenaをベースに提供しており、Qubena AcademyとQubena Roomは、Qubenaを使って算数・数学の学習ができる個別指導の学習塾で、Qubena with Liteはご家庭のタブレットでQubenaを利用することができるサービスです。

直営の学習塾であるQubena Academyでは、Qubenaによる学習に加えて、「未来教育」というものが受講できます。

具体的には、最先端のテクノロジーやプログラミングを使い、社会や身の回りの課題を解決するSTEAM教育のプログラムになります。

もともと、子ども達に未来を生き抜く力を教えたいということで学習塾を立ち上げたので、Qubenaにより捻出できた時間で、子ども達の未来を生き抜く力を育てるための学びを「未来教育」と名付け、提供しています。

STEAM教育の様子の写真

STEAM教育の様子


―Qubena導入先の変化については、いかがでしょうか。
千代田区立麹町中学校で2018年度の2・3学期に実証事業を行ったのですが、そこで学校全体の3分の2の生徒達にQubenaを導入し、残りの3分の1の生徒達との比較を行いました。目指したのは、従来の学習計画で設定していた授業時間(標準授業時数)を半分にする授業計画で、例えば中学1年生の2・3学期分の学習時間の中で、2・3学期分の学習の他、中学2年生の学習も先取り、そしてSTEAM教育まで実施させていただきました。

千代田区立麹町中学校で実証事業の様子

千代田区立麹町中学校での実証事業の様子


授業がどのように変革したかというと、始業チャイムが鳴る前から生徒達はタブレットを取り出して勉強し始め、先生が開始の声掛けをすることもなくなりました。

そもそも、先生は前に立って教えていません。基本的には生徒はQubenaを通して数学を学び、分からない時に先生に質問をしたり、生徒同士で学び合い教え合いをするといったスタイルに変わっていきました。

AI型タブレット教材というと、各人が黙々と取り組むイメージがあるかもしれませんが、実はそんなことはなく、騒々しい授業になっていきましたね。

これこそが、文部科学省が推進する「対話的で主体的な学び」の変革なのではないかということで、今注目していただいている点です。

数値的な変化としては、62時間の授業時数が34時間に短縮され、結果、新しい時間を28時間生み出すことができました。そのうちの18時間は次の学年の範囲へ進むことができたり、10時間はSTEAM教育に充てることができました。これは1年生の数値ですが、2年生・3年生でも同様の結果となりました。

他にも、弊社の学習塾Qubena Academyでは、Qubenaを使った学習で、中学校1学年分の範囲を平均28時間の学習で修了しているというデータも出ています。
―導入後、子ども達からはどのような反応がありましたか。
麹町中学校にQubenaを導入させていただいた時のアンケート結果では、「数学の学習は楽しい」「数学の学習に積極的に取り組んでいる」「数学の学習が「得意」である」といった意識変化の項目が、導入後はすべて伸びていました。

アダプティブラーニングにおいては、「子ども達の時間を生む」こともそうですが、「置いてけぼりを作らない」というのが、個別最適化した教育には大事なことだと思います。

算数や数学などの積み重ねで修得していく学問は、1度つまずくとその先が分からなくなってしまうので、集団指導でそのまま進んでいくと結果的に子ども達は分からないまま進むことになるんですね。

ですが、個別最適化した教育は、その子が分からない部分をキャッチアップしながら常に進んでいけるので、自己肯定感を育むきっかけを与えることができるというのが、とても大事な所だと考えています。


―現場の先生方の役割にどのような変化がありましたか。
Qubenaを導入することで、先生方の役割は、質問対応や子ども達のモチベーションを引き出したり、コミュニケーションをすることがメインになっていきます。

はじめは「寂しい」「最初は戸惑った」という意見もありましたが、継続していくと「子ども達が、こんなことを考えているんだということを知る機会になった」「適切な指導がもっとできるようになった」というポジティブな声が聞かれるようになっていきました。
―他社のAI教材サービスも市場には出てきていますが、他社との差別化についてはどのようにお考えでしょうか。
例えば、比重を置く事業の展開先が、学習塾、学校と異なるだけでも、かなりの違いが生まれます。

個別指導の先生と学校の先生が現場で悩まれているポイントはまったく違いますし、教材自体に対するアダプティブ性というよりは、ラーニングマネジメントシステムや料金体系といったさまざまなものが、異なるプロダクトのように進化していくので、そこはまったくもって違うものになっているかなと感じます。

それから、受験希望者もしくは初学者など、どこをアダプティブにするかという教育的な観点での違いによっても、差異が出てくるのではないかと思います。

テクノロジーの力で、現場を未来型にアップデートする

―Qubenaを使った学びの中で、子ども達の未来はどのように変化していくと考えられますか。
子ども達の未来が変わっていくというよりは、「今のままだとヤバい」ということなんですよ。

将来、シンギュラリティが本当に起きた時に、今の生き方とは違う生き方をしていかなければいけないのに、教育現場で行っていることは戦前から大きくは変わっていません。

神野氏の写真

2019年6月から、中央教育審議主催の特別部会の臨時委員を就任している神野氏


僕らがやりたいことは、社会環境の変化に合わせて、教育現場も変化していけるような構造を作ることです。子ども達の未来がどう変わるかで言えば、社会環境の変化に対応できて明るい未来であるということになりますが、重要なのは、今のままだと変化に対応できないということです。

それが、僕らが強く抱いている問題意識です。
―日本の教育現場の問題、そして課題についてはいかがでしょうか。
今後の社会は、時と場所を越えて、自分と異なる個性を持った人間と一緒になって新しいクリエイティブをしていくことが当たり前になり、みんなと同じ価値観や知識を得ている必要性がなくなってきます。

ダイバーシティや多様性といった個性を守ることにしっかり取り組んでいる国家の教育は、そんな時代にぴったり対応することができますが、「みんな一緒」を重視する日本の教育はそうではありません。

日本人だけが、日本人だけのマジョリティの考え方を植え付けられるのですが、ガラパゴスの価値観の中でガラパゴスのプロダクトを作るだけの存在になるだけで、グローバルリーダーにはなれません。

高度経済成長期、日本は一体感をもって高品質なプロダクトを生んできたことは間違いありませんが、インターネットで世界中の人が簡単につながり、地球上の70億人の中から力を合わせる人達を見つけるという価値観が当然になった時の産業を見据えて、国民一人一人の個性をちゃんと守るような教育現場をまだ作りきれていない、そこが一番の課題ですよね。


しかし、これは日本人の国民性なので、法律を変えたら変わるかといったらそういう問題ではありません。だからこそ、テクノロジーが大事で、テクノロジーを駆使して現場を未来型にアップデートしていくというのが、今まさに僕らが取り組んでいることですし、この国の教育課題と唯一のソリューションなんじゃないかと思っています。
―今後のQubenaの展開と御社のビジョンを教えてください。
まずは、日本全土で、アダプティブラーニングを受けたいと思ったら誰でも受けられる状況を作る、というのを数年以内に実現したいと考えています。日本に限ったことではなく、アジアは子ども達の時間がない国が多いので、そういった場所に時間を作るためのソリューションを提供し、さらには、子ども達が人生を最適化していけるようなサービスまで踏み込んでいくことを目指しています。
―神野さん、ありがとうございました。

公開日:2019.09.12

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