何度でもやり直せる社会をつくる|学び直したのための個別指導塾「キズキ共育塾」代表 安田氏インタビュー

キズキ共育塾代表安田氏アイキャッチ
いじめなどの人間関係や学校教育への適応に悩み、不登校、中退、ひきこもりを経験した人のための個別指導塾があります。それが、キズキ共育塾。
「もう一度学び直したい」と考える人のために、どのようなサポートが行われているのでしょうか。
塾を運営する株式会社キズキ 代表取締役社長の安田祐輔さんにお話を伺いました。

1対1の個別指導だからこそ、生徒の悩みに応えられる

――キズキ共育塾では、どのような生徒が多いのでしょうか。
おもに不登校や中退、ひきこもりを経験した人たちです。
大学受験を目的に通っている人が一番多いですが、高校受験を目指す中学生や、働きながら大学や専門学校の受験を目指す社会人の方もいます。

キズキ代表 安田祐輔氏

――どのようなコースがあるのでしょうか。
通塾タイプの個別指導コース、オンラインの個別指導コース、通塾タイプの5~6人ほどの少人数集団授業コースの3つがあります。

このうち、一番多くの生徒が選択しているのが通塾タイプの個別指導コースです。
長い間不登校やひきこもっている人の場合、親以外の人と何年も話していないというケースも珍しくないので、いきなり集団授業を受けるのは抵抗があることが多いのです。

個別指導で勉強のペースをつかみ、慣れてきたら集団授業も受けるという生徒もいます。オンラインコースは、地方に住んでいて校舎に通うが難しい人や、外出に苦痛を感じる人などが利用しています。
――通塾タイプの個別指導は、マンツーマンで指導を受けられるのでしょうか。
はい。個別ブースで完全1対1の授業を行っています。
1対1だからこそ、「長い間学校に行っておらず、どこから勉強してよいのか分からない」「勉強の仕方が分からない」という悩みに応えられると思っています。

ブースには小さなホワイトボードがあり、それを使って勉強を進めることが多いですが、これといって決まったスタイルはありません。
いきなり勉強ばかり進めようとすると、生徒の気持ちがついていかず「強要されている」と感じるかもしれません。
そのため、慣れるまでは雑談で緊張をほぐすこともあります。
まずは、「居心地が良い」「ここに通い続けたい」と思ってもらえるように努めています。

個別指導スタイルで勉強をサポート

これ以上挫折をさせたくない。講師の質を最重要視

――生徒と講師の関係づくりに力を入れているのですね。
その通りです。そのため、講師は科目別の担任制で、毎回同じ講師が授業を担当しています。
個別指導塾では、講師が毎回変わる塾もありますが、この塾では特に生徒を深く知ることが大切だからです。

講師が最も気を配っているのが、生徒に挫折経験を与えないこと。
他の場所で様々な挫折を経験した末に私たちのところに来てくれたのに、そこでまた新たな挫折を味わわせてしまったら、この塾の存在意義がなくなってしまいますから。
ですので、講師の質は非常に重視しており、採用面接の際に「この質問に対して、このように答えたらNG」といったように、客観的な基準をかなり細かく決めています。
――講師には、どのような経歴の方がいるのでしょうか?
講師は主にアルバイトですが、大学生は比較的少なくて、社会人を経験している人が過半数ですね。
自分で会社を経営している人や、定年退職した大学の先生などもいます。
キズキ共育塾の卒業生が応募してくることもありますよ。
不登校やひきこもりの経験がある講師も多いのですが、こういった経験があるかどうかは採用には直接関係ありません。

キズキ共育塾では、講師の髪形や服装は自由。スーツを着用する必要はありません。
「教える人と教わる人」という上下関係を生み出さず、生徒がリラックスして授業を受けられるような環境づくりを心がけています。

――担当の講師はどのように決めるのでしょうか?
入塾面談の際に、生徒の希望を聞いて決めます。

たとえば、「学校で年配の先生と合わなくて不登校になったので、若い先生がいい」という生徒がいる一方、ひきこもりの期間が長く、20歳前後になっている生徒なら「年齢が近い講師だと複雑な気持ちになる」と思うかもしれない。

そのような場合は、中年の講師を担当にするといったように、本人の希望を第一に考えます。
また、「しっかり話を聞いてくれる先生がいい」とか「自分は話すのが苦手なので、おしゃべりで面白い先生がいい」といったように、生徒の性格による要望も汲んで決めていきます。
――入塾面談には親が同席してもよいのでしょうか?
もちろんです。半数の生徒が保護者の方と一緒に面談を受けています。
また、生徒本人ではなく保護者の方だけの相談も受け付けています。

親御さんは塾に行かせたくても、本人が乗り気ではないこともあるでしょう。
その場合は、子供に「塾に相談に行ってきた」と伝えると、プレッシャーになるので黙っていたほうが良いケースもあります。
そういったことも、親御さんとの面談の際にアドバイスしています。

睡眠改善プログラムで、生活習慣の安定をサポート

――学習カリキュラムはどのように立てるのでしょうか?
不登校の期間が長いと、高校生でも中学生の学習範囲が理解できていないといったことはよくあるので、生徒の学習レベルを把握し、分かるところまで戻って授業を進めていきます。
これは個別指導だからこそできることです。

このように、生徒の理解度に応じてカリキュラムを考えますが、計画通りにいかないことがプレッシャーになる場合もあるので、あまりキッチリしすぎないようにしているんです。

また、入塾したばかりのころは、なかなか安定して塾に通えないこともあります。
まずは、計画どおりに進めるよりも、安定して毎週通えるようになることを目指します。
――塾に通うこと自体が難しいというケースは多いのでしょうか。
長い間ひきこもっていると、外出の機会が少なくなり、時間通りに行動することが難しくなることもありますし、精神的な波もあるでしょう。

そのため、まずは決まった時間どおりに塾に来ることを目指し、それができたら集中して90分間授業を受ける、さらに30分でもいいから家で復習しようといったように、段階を踏んでサポートしています。
――生活習慣を安定させるためのサポートも行っているのでしょうか?
睡眠を専門とする医師と提携し、睡眠改善のためのプログラムを社員が学び、それを睡眠リズムが乱れがちな生徒に教えています。
睡眠リズムが乱れると自律神経の働きが鈍り、精神面にも影響が出やすいので、睡眠を整えることは非常に重要なのです。

プログラムを受けた生徒は通塾率が上がることも分かり、成果を実感しています。

受験が、自信を取り戻して前向きに生きるきっかけに

――志望校選びに関しても、アドバイスをしているのでしょうか?
もちろんアドバイスはしていますが、その際に重視しているのは偏差値ではなく、生徒自身に合った学校であるかどうかです。

たとえば大学であれば、大学ごとに規模や授業のスタイルなどの特色があります。
生活習慣が乱れがちな人は、少人数制できめ細やかにサポートしてくれる大学が合っているかもしれませんし、高校時代にスクールカーストが苦手だったという人には、マンモス大学が向いているかもしれない。

また、睡眠リズムが乱れがちな人は、通学時間が短くてすむように家から通いやすい大学といったように、生徒の特性に応じて様々な面からアドバイスをしています。

――不登校やひきこもりの期間が長くても、勉強して受験に挑戦できるのでしょうか。
塾で勉強を頑張って志望校に合格し、いきいきと学校に通う生徒をこれまでたくさん見てきました。
実は、受験がその後の人生を前向きに生きるきっかけになることは多いんです。

生徒はこれまで頑張っても報われなかったり、自分には非がないことで傷ついてきた人ばかり。
一方、受験は、努力すればそのとおりの結果が出る。それが自信につながるのです。

たとえば、いじめで高校を辞めて通信制高校に通っていたA君は、大学に合格し、サークルの代表を務めるなどキャンパスライフをエンジョイしていました。
卒業後はメディアの世界で働くことを志し、今はテレビ制作の現場で活躍しています。

また、私立中学を中退したB君の場合は、英語の先生と合わなかったことが理由で英語に苦手意識があったのですが、この塾に通い始めてから英語が好きになり、明治大学に合格。
大学での成績が優秀で表彰も受けています。その後も英語の勉強を続け、TOEICスコア900点近くを獲得したほどです。

中学2年で不登校になったC君は、「夢がないから高校にはいきたくない」と言っていました。
ある時、僕自身の高校受験について「成績の悪かった僕が偏差値の高い高校に無理に進学したら周りと馴染めなくていじめられそうだから、逆に僕と同じくらいの人が多そうな偏差値の低い高校を選んだ」と話したら、「そんな選び方もあるんだ」と、驚いていたんです。
もしかしたら、「より高い偏差値の高校を狙わないといけない」といった固定観念から、高校進学に良いイメージを抱けなかったのかもしれません。

その後、C君は都立高校に合格。内申点をあまり重視しない高校を選びました。
高校入学後も通塾を続け、大学にも合格したのですが、調理師になるという夢ができて退学。調理師の専門学校に入り直し、今はレストランでバイトしながら、シェフになるための修行をしています。

講師には様々なバックグラウンドの人がいるので、「こういう生き方でもいいんだ」「こんな考え方もあるのか」と多様な価値観を知ることができるのも、この塾の特色かもしれません。
――どのような大学に合格しているのでしょうか?
毎年、東大や早慶などの私立トップ大学に合格者を輩出していますが、合格実績の詳細は公開していません。
偏差値が高い大学に行くことがすべてではないし、大学入学がゴールではないからです。

私たちが目指すのは、最終的に生徒が自己肯定感を持ち、社会の中で自立して生きていけるようになること
大学はそのためのステップの一つにすぎないと思っています。

親にできるのは、焦らず、押しつけずに見守ること

――安田さんは、どのような経緯でこの塾を設立したのでしょうか。
実は、僕自身も不登校やひきこもりの経験者なんです。

中学は寮のある私立に入ったのですが、管理が厳しくてなじめず、2年生で退学。
親が離婚と結婚を繰り返していて家庭にも安らげる場所がなく、勉強に身が入らなくなりました。
その後、地元の公立高校に進学しましたが、学校にはあまり行かずに、どこにも居場所が見つからなくて、暴走族のパシリのようなことをやらされたりで……。

でも、高校3年のある日、「こんな人生を変えたい。そのためには大学受験をするしかない」と奮起。

予備校に通ったものの、「みんなにはこの問題が分かるのに、僕には分からない」と周囲が気になったり、「皆の前で指名されて答えられなかったらどうしよう」と不安になったりして、最初はなかなか勉強に集中できませんでした。
結局、2浪した末に大学に進学。

大学時代は自分が興味のあることに打ち込み、東欧の研究機関でインターンをしたり、中東の若者向けの平和会議をしたり、充実していましたね。

――大学卒業後、どのような道に進んだのでしょうか?
総合商社に就職したのですが、職場も仕事も合わなくて。

僕には軽度の発達障害があり、その特性で空気が読めない発言をしてしまったり、感覚過敏によって革靴をはきつづけるのが苦痛だったりしたこともその一因です。

それでも適応しなければならないと頑張っていたのですが、入社から4か月後のある日、職場でパニック障害を起こしてしまいました。
うつ病と診断されて、1年間休職した末に退職。
自宅でひきこもっている最中は本当につらかったですね。

でも、なんとか生きていく手段を探さなければいけない。
それまでの経験から、自分に合った環境で働くには自分で事業を起こすしかないと考え、「昔の僕のように、もう一度学び直したいと考える人を支える仕事がしたい」と、2011年にキズキ共育塾を設立したんです。
――不登校やひきこもりの子供のために親ができることはあるのでしょうか。
自己肯定感がこれ以上落ちないように心がけることです。

不登校やひきこもりの子は、「学校に行けないなんて情けない」とか、「どうせ自分なんて何もできない」と、自己否定したり自分の可能性を信じられなくなっているケースが多い。

「学校に行っていなくても、その後、自分で会社を興して活躍している人もいるんだよ」などと教えてあげたり、そういった人の体験を綴った本を読ませるのも良いと思います。

親が焦りすぎないことも大事です。

特に女の子は「私がこんなふうになってしまって親に申し訳ない」と考えがちなので、親が深刻になりすぎないようにしてほしいですね。

また、親の考えを押しつけないことも大切です。
「塾に行った方がいい」ではなく、「このままもう少しの期間ひきこもる方法もあるし、塾に行くという方法もあるよ」などと選択肢を与え、本人が考え、選べるようにしてあげてほしいと思います。
――ありがとうございました。

公開日:2019.11.11

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